top of page
検索

夏ポートレート③ (長岡花火ポートレート)

  • 執筆者の写真: tenchijin | 天地人
    tenchijin | 天地人
  • 2 日前
  • 読了時間: 5分

〜 model 茅ヶ崎めぐみ / 奈月 〜


 今年も長岡花火の撮影モデルとして2日間東京から来ていただいきました。

 久しぶりのの撮影の茅ヶ崎めぐみさん。相変わらず楽しい方ですね。花が咲いたようになる。不規則な打上の花火でもフレキシブルに動いてくれるのが頼もしかった。

 初撮影の奈月さん。奈月さんはずっと撮りたい撮らなければ、と思っていたのにまさかの初撮が長岡花火になるとは・・・とてもチャーミングな方でした。シルエットを意識してくれた撮影でした。



 長岡花火は何十年も前からあり、長岡市民をはじめ多くの人たちを魅了してきた。そしてその一人一人に幾千幾多の長岡花火に対するストーリーを持っている。だからこそ長岡花火はここまで有名になったんだと思う。


 今回は少し写真の話を外れて長岡花火にまつわるひとりの青年の話をする。フィクションとしてお読みいただきたい。



「 打上花火 」
「 打上花火 」



 大学生である僕は人並みに青春を横臥していた。

 友達にも恵まれ、よくある話だが合コンにも誘われ、女友達も多くなった。

 大学2年になった春、とある合コンで長岡出身の女の子と意気投合した。もちろん話題は長岡花火だ。その場にいた僕の友達と今年の夏は長岡の花火を見に行こうということになった。その友達はすでにカップルになっていたのでその2人と僕と長岡の女の子と4人でいこうと約束をした。女の子同士は仲良しだ。友達は「上手くやれよ」というが、僕はその気は全くなかった。彼女には彼氏がいるらしいという噂を聞いたことがあるからだ。

 その後しばらくこれに関する話は何ももなかったし(ときどき大学の廊下ですれ違うことはあったけれど)、長岡花火も見に行くことすら忘れていたのだけど、その友人からいきなり明日朝集合で寺泊(カニとか海鮮が美味い。海があるので学生のデートに使う。)を回ってから長岡花火に行くからな。といわれたときには正直、青天の霹靂のような感じだった。びっくりした。



 彼の車に乗って長岡に着いた。待ち合わせの時に現れたのは浴衣姿の彼女だった。可愛らしかった。好きになった。浴衣は何倍も女の子を可愛くする。彼らもう一組はカップルだったので河川敷の会場まで自然と僕らは2人になる。意識せずにはいれないよね。たわいもない話をしながら会場に向かう。土手に着いて場所取り(当時は有料席などなかった)も兼ねてシートを広げる。彼女が持ってきたシートが仮面ライダーだったのにみんなが笑う。弟のものだと彼女が照れる。持ってきたビールを飲み始める。めちゃくちゃ楽しい時間だった。女子が早めにトイレに行くといって場所を離れたときに耳元で彼がおいチャンスだぞとあおる。何故か自分もその気になっていて、ここに来るまでにはそんな感じじゃあなかったのに、今では気になっていてしょうがない。彼女が好きになってしまっている。彼女の姿をチラチラ見てしまうんだ。



「 フェニックス 」
「 フェニックス 」


花火が始まった。僕の見る初めての長岡花火。すごく感動的な花火が続く。でも彼女が気になっている僕は花火よりもチラチラ彼女を見てしまう。時々花火で光る彼女の顔が美しい。クライマックスの正三尺玉の打ち上げが終わったとき彼女の顔を見たらどきりとした。彼女の顔に感動で頬に涙が一筋流れていたんだ。お互いに目が合ってしまった。気まずかったけど、この時の恥ずかしそうに手で顔を隠す仕草を見せた彼女のはにかんだ表情が未だに忘れられない。芯の底から可愛いと思った。



その夜から友達の配慮もあって付き合うことになった。

前の彼氏とは別れたこともこのとき知った。

その後は大学生でありがちだが同棲もした。

人生で一番楽しかった時期だったように思う。



卒業の年、今度は2人きりで長岡花火に出かけた。

花火が終わる頃、お互いに将来の約束をした。

卒業した最初の年に告白するよと約束をした。

三尺花火が終わると帰路につくのだけど、とても彼女は嬉しそうにはしゃいでいたことを思い出す。



「 夏の夜の夢 」
「 夏の夜の夢 」


就職した年から数年、仕事が忙しすぎてお互いに余裕がなく、長岡花火に行くようなこともなかった。

仕事に夢中だった。そして約束した告白をする余裕すら自分にはなかった。

告白するなら長岡花火で、と決めていたのに。


そして5年目の長岡花火の年、僕のアパートの前に段ボールが置かれてあった。

それは彼女の部屋に置いてあった僕の私物だった。


その後彼女は上司の勧める所謂お見合いで結婚したらしい。

2人の子どもにも恵まれて幸せそうに生活していると友達の彼女から聞いた。



今年も長岡花火を見た。

今、長岡花火を見て思うのは、もしあの時彼女を長岡花火に誘って告白していたら。ということである。今はそれぞれ違う道を歩いて、たぶんお互いに幸せでいると思うけど、あの学生の日の長岡花火は人生のクライマックスだったんじゃないかと思う。



長岡花火は、そういう幾多の人々のたくさんの思い出とともに歩んでいるから、魅了してやまないんだと思う。

今年の夏も多くのストーリーが生まれるんだろう。


そして僕はこう思う。

長岡花火は少し苦い思い出もあるけれど、日本一の花火に間違いない!!と。



「 星降る夜に 」
「 星降る夜に 」

=解説=

「星降る夜に」

model 茅ヶ崎めぐみ

location 新潟県長岡市

Camera Nikon Z9 Lense Nikon Z 20mm f/1.8S


 長岡花火が日本一の花火と言われる所以は「正三尺玉」にある。いまでこそフェニックスや天地人が有名であるが、昔から隣の片貝花火と日本一を競ってきた大花火だ。

 この巨大で天を打つような花火を一人の女性と共に描いてみたいと思った。

 三尺玉の打上の直前に空襲サイレンが鳴る。このサイレンを合図に通常の花火と違う所から打ち上がる花火にカメラやピントを合わせる。提灯はピントを合わせるためのものだ。方向が問題なのだが三脚のネジを緩くし、どこから上がっても対応できるようにする。フレキシブルなズームレンズの方がよいのだろうが、ISOを下げたいので明るい単焦点をセットしてある。打上灯の光と共に方向を合わせるのだが一番の問題は三尺玉の高さである。通常の花火とは違いすぎるのだ。高さを画角に収めきりたい。

 この場所は何十年も前に長岡花火を見た河川敷の土手であったことを思いだし、その時の感覚をもとに高さを調整した。

 三尺玉は、まさにあの時と同じところに打ち上げられた。 あの夜と同じに美しかった。


 
 
 

Comments


bottom of page